ボルトエンジニア(株)

工学講座 ボルト・ナット締結の知識

質問6

ボルトの締め付けにはどのような方法がありますか?

回答

 ねじ部品を締め付ける場合、ねじ部品の寸法形状、締め付け対象となる機械構造物の種類、要求される軸力の精度、作業性などを考慮して締め付け方法が決定されます。

[1] トルク法

 ねじの斜面を利用してトルクレンチやスパナにより締め付ける方法で、人力による工具のほか、油圧、空気圧、電動によってトルクを与えることにより、作業性と締め付け精度の改善、大きな呼び径のボルトへの適用を可能にした工具があります。規定のトルクで締め付けても、接触面の摩擦係数がばらつきに起因して、ある程度の軸力がばらつくことは避けられませんが、作業性の良さからもっとも広く使用されているボルトの基本的な締め付け方法です。

[2] トルク勾配法

 トルク法の一種であり、締め付けた時にねじ部品の谷底を中心に発生する塑性変形により、ナット回転角に対するトルクの変化率が小さくなることを利用した方法です。通常のトルク法に比べて高い締め付け精度が期待できますが、トルクの変化率を測定するための専用の工具が必要となります。

[3] 回転角法

 回転角をコントロールすることによってボルトに目標軸力を与える方法で、トルク法と同じく、ナットあるいはボルト頭部にトルクを与えて締め付けます。弾性域回転角法と塑性域回転角法があり、前者は締結部を分解・再組み立てするような舶用関連の重要部品等に適用されており、ある軸力までトルクで締め付け、その後回転角で制御して締め付けを完了するというケースが多いようです。後者は、回転角が大きいために軸力の制御が比較的容易で、締結部の小型軽量化を目的として、自動車産業等で使用されています。

[4] 張力法

 油圧ボルトテンショナーと呼ばれる専用の装置を用いて、ボルトに直接引張力を与えて締め付ける方法です。接触面の摩擦係数の影響をほとんど受けないために、原子力関連機器、圧力容器、大型ディーゼル機関の重要部品など、高い締め付け精度が要求される締結部を中心に使用されています。一方、締め付け過程の特性から、
 1)薄板の締結には向かない。
 2)ガスケットなど剛性が低く、その剛性を高い精度で評価することが困難な材料が締結部に挿入されている場合、目標軸力を得るための初期張力が定めにくい、すなわち締め付け精度が著しく低下する可能性がある。という点に注意する必要があります。
また、最初に与える初期張力は目的軸力よりも高いために、降伏応力付近で使用するボルトについては注意を要します。

[5] 熱膨張法

 締結部に装着した中空ボルトにヒータを挿入して加熱し、軸方向伸びを発生させる。その状態でナットを回転させて着座させ、冷却による収縮を利用した締め付け方法です。締め付け可能なボルトサイズに制限がなく、装置が安価、狭い場所の締め付け作業に使用できるという特徴があります。一方、加熱時間と発生する軸力の関係を求めるのが難しい、締め付け作業時間が長いという欠点がありますが、近年開発された高周波を使用したヒータでは加熱時間が短くなっています。

 以上の締め付け方法のうち、もっとも広く使用されているトルク法に加えて、弾性域回転角法、張力法、熱膨張法については、締め付け特性がかなり詳細に解明され、その研究成果が公表されています。

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